神柵と仏壇/家

江戸時代末頃~( 旧編集委員会 1980年6月 筆 )

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 家の中に神棚と仏壇を設けて、神・仏をまつることは一般の習わしになっている。おおかたの家が座敷といわれる部屋に、伊勢神宮、氏神から請けた「お札」を納める神棚と先祖をまつる仏檀を設けている。そうして、常に合掌礼拝して、心の平安と幸福を求める生活は、江戸時代末頃から、村では庄屋など有力な家からはじまって、一般にひろまったようである。

 お正月には、お鏡餅を神仏に供える。かまど、うすや農具にも供えた。お盆には、13日夕に、お精霊さまを迎えて、15日までお祀りし、この間に檀那寺から棚経をうける。15日夕に、お精霊流しをする。迎火・送火をたく習わしであった。

 よそからものをいただいたり、初ものは、まっさきに仏壇にお供えする。うれしいことがあった時困った時にも神仏に奉告する。先祖とことばを交わすのである。

 近頃は、住まいを構えても、神棚・仏壇を設けない場合が多いようである。親兄弟から分家して、夫婦子どもとなり、過去から切りはなれた家をもったために、その必要を感じないことであろう。しかし、そのような家も20年、30年とたてば、やはり歴史をもつようになって、心のよりどころとして家に神棚・仏壇をということになっていくのではなかろうか。