棟札発見

一六八〇年 ( 矢野 清次 一九七九年著 )

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 四月初めに、八王寺神社の神殿の清掃中、十枚程の棟札が見つかった。

 ほこりだらけで何が書いてあるのかさっぱりわからなかったが、水できれいに洗うと、はっきりと字が見えてきた。

 この棟札は昔から神社の改修、新築、寄進する時、村民氏子一同の安穏と幸を祈願した当時の人々の貴重なる文献となるとも言えるもので一番古いものは延宝八年(一六八〇)徳川綱吉時代から、宝永(一七〇八)、正徳(一七一三)、享保(一七二二)、寛政(一七九〇)、文政(一八二七)、慶応(一八七六)の札書がある。

 これを見ると、当時の神主名、庄屋、組頭、大工名等がわかり、なかなか興味がある。

 次に三枚書いて参考に供する。

◎棟札 その一 (一六八〇年)

(表) 延宝八庚申年
奉寄進 御銖子八王子大明神家内安全所放白
 三月拾日奉寄進御立明シ 矢野文右衛門

(裏) 清九郎・又七郎外五一名署名  敬白

◎棟札 その二 (一八二七年)

(表) 神明宮 神 主
白山神 奉修復神殿村中為安全
熊野神社   長岡円大夫政豊

(裏) 文政十年亥九月二八日
     春日井郡今村庄屋
          鈴木 利兵衛
          稲垣 善 六
当日酉上刻正迂宮 組頭 鈴本 清 七
            惣氏子中
         大工 青山 清兵衛

◎棟札 その三 (一七九〇年)

(表) 天照大神   庚 神主長岡朝臣太夫保包
    寛政二 年
素盞鳴尊   戌  長岡朝臣  今保
春日井郡山田三庄今村氏神八王子大明神奉上造月
       庄屋 青山 小右ェ門
       組頭 鈴木 林右ェ門
       同  青山 彦右ェ門
       同  矢野 長兵衛
       同  鈴木 利兵衛
金井大明神七月三日吉日

(裏) 天下泰平五穀成就 正遷宮役掛人数
万豊快楽
村中男女安全息災 長岡円太夫 喜之右ェ門
長久祈攸攸    長岡 勇助 常   吉
         松岡 大隅 角   蔵
         長岡数太夫 幸右ェ門
         大原 権助 甚   助
               弥右ヱ門
六月十二日          惣   助
修迂宮役掛人数  御几帳寄付人数
 大原円治 幸四郎 青山小右ェ門  矢野利 吉
 松岡中助 徳 蔵 青山彦右ェ門  鈴木利兵衛
     定右ェ門 伊藤文之右ェ門 鈴木利平治
      助 七
      甚 助
     弥右ェ門
      惣 助

(註)棟札の年代について

○ 棟札一 延宝八年(一六八〇)
徳川綱吉、五代将軍となる。生類あわれみの令を出した頃。

○ 棟札二 文政十年(一八二七)
頼山陽、日本外史をあらわす。

○ 棟札三 寛政二年(一七九十)
本居宣長、「古事記伝」をあらわす。朱子学を保護し異学を禁じた。
(寒山拾得)蕪村ら活躍す。

※今回発見されたもののうち、もっとも古いのが(棟札一)で、三〇〇年前のもの。

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