民間信仰と俗信

( 今旧編集委員会 1980年5月 筆 )

<back

【お天王さま】

 津島神社(祭神スサノオノミコト)の分身を部落ごと道端に祀ったもので、辻天王ともいう。寺山・市場・北脇・川西等、各島の代表者が毎年津島神社ヘ参詣し、大麻を迎えて来て配るもので、昔は6月5日から各家ごとに赤提灯を点してお天王さまにお詣りする。これを15日まで続けると天然痘や伝染病にかからないと信じられていたという。

【お庚申さま】

 60日ごとに巡ってくる庚申かのえさるの日に、信者が集って庚申様の掛図(帝釈天・青面金剛・三猿などの図)や庚申塔をまつり、夜を徹して酒食を共にしながら語り合う。

 これは庚申の日の夜ふけ、人間の体内に住むという三の虫=上尸、中尸、下尸の3匹=が、その人の睡眠中に体からぬけ出して天帝にその人の罪科を報告するので生命にかかわると信じられていて、睡らないために酒盛りをして夜を明かす。

【おんか祭り】

 お鍬祭り(本紙2号に紹介)と同様、稲の害虫を防ぎ豊作を祈願する行事で、青竹の先にワラ人形(斉藤実盛をかたどったものという)をつけ、天下泰平五穀豊穣と書いた紙幟を押し立て、鍾や太鼓で囃しながら村の西端から東端まで田道をめぐる。

【お天道むかえ】

 彼岸の中日に、まず日の出を拝み、弁当を持って三々五々東の方へ向ってどこまでも歩き、太陽が真南へ来た頃、弁当を食べて、今度は西を向いて日没までお日様を送って歩くという、長閑な太陽信仰の風習が大正の頃まで、老人たちの間で行われていた。

【甘茶の功徳】

 4月8日の花まつりの日、慶昌院では甘茶の接待をする慣わしが現在も続いている。この甘茶で墨をすれば書が上達するという俗信は広く知られているが、この地方では甘茶ですった墨で短冊に、

 「千早振る卯月八日は吉日ぞ かみさげ虫を成敗ぞする」

と書き、戸口の柱に逆さに貼っておくと毒虫や蛇の侵入を防ぐまじないとされ、甘茶で眼を洗うと眼病が治るとも信じられていた。