民法と相続 「祭具の継承」/家

1898年~( 旧編集委員会 1980年3月 筆 )

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 明治31年(1898)に公布された民法を明治民法(旧民法)といい、戦後新憲法下で全面改正され昭和23年(1948)施行された現行民法を新民法と呼んでいる。

 明治民法の制定当初から保守と進歩、家族制度維持と廃止の両論の対立が続いていたので、新民法は両論の妥協として生れたといわれる。新民法では「家」の制度は廃止され家督相続ということもなくなり相続とは遺産相続だけ、となった。これまで「家」の名であった姓は個人の名となり夫婦が同一姓を名乗る点は変らないが夫婦どちらの姓を名乗ってもよい、つまり家の継承という考え方は失なわれた。遺産も1人が相続することはなくなり法定相続分は本年5月(1980)の再改正で配偶者が三分の一、子供は三分の二を各々が均分、ということに改められた。

 しかし、その相続編の第897条「祭具等の承継」は、

1.系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する……(以下略)

と、規定されている。この1ヶ条がわが国の現状からみて妥当であるとして法文化されたものである。

 この点が、最初に述べた「両論の妥協」として生まれた、といわれるゆえんである。